CRLFインジェクションは、攻撃者が特定のWebアプリケーションに対して、改行文字(CR、LF)を悪用することによって、HTTPレスポンスを不正に操作する攻撃手法です。CRLFは「Carriage Return(キャリッジリターン)」と「Line Feed(ラインフィード)」の略で、HTTPヘッダーの終了を示す重要な文字です。この攻撃により、攻撃者はHTTPレスポンスヘッダーを操作したり、Webアプリケーションのセキュリティを侵害することが可能になります。
CRLFインジェクションの仕組み
CRLFインジェクションは、攻撃者がHTTPヘッダーを操作することで発生します。例えば、以下のようなPHPコードを考えてみましょう:
<?php header("Location: " . $_GET['url']); ?>
このコードは、urlというGETパラメータの値に基づいてリダイレクトを行います。攻撃者が次のようにリクエストを送信するとします:
http://example.com/index.php?url=http://malicious-site.com%0D%0ASet-Cookie:%20sessionId=12345
ここで、%0D(CR)と%0A(LF)がURLに含まれています。これにより、HTTPレスポンスが以下のように形成されます:
HTTP/1.1 302 Found Location: http://malicious-site.com Set-Cookie: sessionId=12345
この場合、攻撃者はリダイレクトを行うだけでなく、Set-Cookieヘッダーを追加することができ、セッションハイジャックやCookieの盗難を引き起こす可能性があります。
CRLFインジェクションの影響
CRLFインジェクションの影響は以下の通りです。
セッションハイジャック
攻撃者は不正なCookieを設定することで、ユーザーのセッションを乗っ取ることが可能です。
Webサイトの改ざん
攻撃者はHTTPレスポンスを改ざんすることができ、悪意のあるコンテンツを表示させることができます。
フィッシング攻撃の実施
ユーザーを偽のページに誘導し、機密情報を盗むことができます。
CRLFインジェクションと他の攻撃手法の違い
CRLFインジェクションは、主にHTTPヘッダーを操作する点で他の攻撃手法と異なります。例えば、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)は、データベースやDOMをターゲットにする攻撃です。一方、CRLFインジェクションはHTTPレスポンスの操作に特化しています。
CRLFインジェクションの防御策
CRLFインジェクションを防ぐためには、以下の対策が有効です。
ユーザー入力の厳密な検証
ユーザーからの入力にCRやLFの文字が含まれていないか検証します。これにより、不正なリクエストを未然に防ぎます。
エスケープ処理の実施
ユーザー入力をそのままHTTPヘッダーに使用しないようにし、適切なエスケープ処理を行います。
WAFの導入
Webアプリケーションファイアウォール(WAF)を導入することで、CRLFインジェクション攻撃を検知し、防御することが可能です。
セキュリティパッチの適用
使用しているライブラリやフレームワークにセキュリティパッチが提供された場合、速やかに適用します。
具体例
CRLFインジェクション攻撃の実例として、以下のケースが挙げられます。
CVE-2006-0027
この脆弱性は、PHPのheader()関数におけるCRLFインジェクションを悪用したもので、攻撃者が悪意のあるHTTPレスポンスを作成できる状況がありました。この脆弱性を利用することで、攻撃者はCookieを設定したり、リダイレクトを行ったりすることができました。
まとめ
CRLFインジェクションは、HTTPヘッダーを操作することでシステムを侵害する攻撃手法です。攻撃者は、悪意のあるリクエストを介してセッションハイジャックやWebサイトの改ざんを行う可能性があります。
この攻撃から防御するためには、ユーザー入力の厳密な検証やエスケープ処理、WAFの導入が重要です。セキュリティ対策を講じることで、CRLFインジェクションによるリスクを軽減し、安全なWebアプリケーションの運用が可能となります。