CSSインジェクションは、ユーザーが送信したデータがそのままWebページに表示される場合に、外部からCSSコードを注入されることで発生します。これにより、ページの外観が改ざんされたり、ユーザーの操作を妨害したりすることが可能になります。
CSS自体は基本的に見た目をコントロールするための言語ですが、工夫次第でページのデザインを崩すだけでなく、場合によってはXSSやユーザーのセッション情報を盗むような攻撃も可能になります。
例:CSSインジェクションの基本的な仕組み
典型的なシナリオは、ユーザー入力がそのままCSSの一部として解釈される場合です。例えば、次のようなコードがあるとしましょう。
<style> body { background-color: #{{user_input}}; } </style>
ここで{{user_input}}の部分に、ユーザーが自由に文字列を入力できるとします。攻撃者が以下のようなCSSを入力するとどうなるでしょうか。
red; } body { background-color: black;
これにより、CSSの閉じ括弧を強制的に挿入して、本来のスタイルを破壊した上で、新しいスタイルを適用することが可能になります。このように、ページの見た目が攻撃者の意図するものに書き換えられてしまいます。
リスクと影響
CSSインジェクション自体は、SQLインジェクションやXSSほど直接的な危険性はないとされています。しかし、放置しておくと次のような問題が生じる可能性があります。
ページの見た目や機能の破壊
攻撃者がページのスタイルを改変することで、ユーザーがWebサイトを正しく利用できなくなることがあります。これにより、信頼性が失われ、ユーザーの満足度が低下する可能性があります。
クリックジャッキング
攻撃者は、要素の透明度や位置を変更することで、ユーザーが意図しない場所をクリックさせる「クリックジャッキング」を行うことができます。これにより、悪意のある操作がユーザーによって実行される危険性があります。
XSSのトリガー
一部のブラウザでは、CSSインジェクションがXSSの引き金になることもあります。特に、url()関数などを悪用してスクリプトを実行させるケースが報告されています。これにより、ユーザーの個人情報が漏洩するリスクも考えられます。
CSSインジェクションの対策
では、CSSインジェクションからアプリケーションを保護するためにはどのような対策を講じるべきでしょうか?以下のような手法があります。
入力値のサニタイズ
ユーザーからの入力値をCSSに直接組み込む際は、特殊文字や意図しないCSSコードが入らないように、厳密にエスケープやフィルタリングを行いましょう。JavaScriptやCSSの変数に直接値を入れる場合、適切にエスケープすることでインジェクション攻撃を防ぐことが可能です。
ホワイトリストの使用
ユーザー入力を受け付ける場合、許可される値をホワイトリストで指定し、それ以外の値は無効にする方法が有効です。たとえば、colorプロパティに入力できる値を特定の色コードや名前に限定することで、攻撃を防ぐことができます。
コンテンツセキュリティポリシー(CSP)の導入
CSPは、Webページに対してどのリソースが許可されるかをブラウザに指示する仕組みです。CSPを設定することで、外部から不正なCSSやJavaScriptが挿入されることを防ぐことができます。例えば、style-srcポリシーを設定して、外部からのCSSの読み込みを制限することが可能です。
まとめ
CSSインジェクションは、他のインジェクション攻撃ほど話題になることは少ないですが、適切な対策を取らないとWebサイトに様々な影響を与える可能性があります。ユーザーの信頼を維持し、安全なWebサイト運営を行うためにも、入力値の検証やサニタイズ、CSPの導入など、基本的なセキュリティ対策をしっかり行いましょう。
攻撃の可能性を知り、適切な対策を講じることで、より安全なWebアプリケーションを作成することができます。