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デシリアライゼーションとは?

デシリアライゼーションは、シリアライズ(データ構造をファイルやデータベース、ネットワーク通信などで保存・送信できる形式に変換すること)されたデータを、元のオブジェクトに戻すプロセスです。シリアライズは、オブジェクトを保存したり、他のシステムとデータをやり取りする際に非常に便利な仕組みです。しかし、このデシリアライゼーションプロセスに脆弱性がある場合、攻撃者が悪意のあるデータを送り込むことで、システムを不正に操作することが可能になります。



デシリアライゼーション攻撃の仕組み

デシリアライゼーション攻撃は、攻撃者が細工したシリアライズデータを送信し、アプリケーションがそのデータをデシリアライズする際に発生します。デシリアライゼーション時に信頼されていないデータを適切に検証せず処理してしまうと、攻撃者が意図的に作成したオブジェクトが実行され、不正な動作が引き起こされます。

例:デシリアライゼーション攻撃のシナリオ

攻撃者が、アプリケーションが使用しているオブジェクトのシリアライズ形式を知っている場合、次のようにして攻撃を仕掛けることができます。

  1. 悪意あるオブジェクトの作成 攻撃者は、標準のオブジェクトとは異なる、任意のコードを含むオブジェクトをシリアライズし、データとしてアプリケーションに送信します。

  2. デシリアライゼーションの実行 アプリケーションが攻撃者から送信されたデータをデシリアライズすると、細工されたオブジェクトが生成され、その中の悪意のあるコードが実行されます。

  3. 任意コードの実行 結果として、攻撃者はシステム上で任意のコードを実行したり、ファイル操作やサーバーの制御を奪ったりすることが可能になります。



デシリアライゼーション攻撃のリスク

デシリアライゼーション攻撃が成功すると、アプリケーションやシステムは重大なリスクにさらされます。以下は、典型的なリスクです。

1. 任意コード実行(Remote Code Execution: RCE)

攻撃者がデシリアライゼーションプロセスを通じて任意のコードを実行できる場合、システムは完全に制御される危険性があります。これにより、攻撃者はシステム内のデータを盗む、変更する、削除するなどの操作を行うことができます。

2. 権限昇格

攻撃者がシステム上のアカウントや権限を乗っ取ることで、本来アクセスできないデータやシステムリソースにアクセスできるようになる可能性があります。

3. データの改ざんや漏洩

攻撃者が細工したオブジェクトを使用して、アプリケーションのデータベースやファイルにアクセスし、データを改ざんしたり漏洩させたりする危険性もあります。

4. サービス拒否(DoS)

悪意のあるデシリアライズデータがアプリケーションの処理を過負荷にさせ、システムが応答しなくなることで、サービスの停止や遅延が発生する可能性があります。



デシリアライゼーション攻撃の防止策

デシリアライゼーション攻撃を防ぐためには、アプリケーションでデシリアライゼーション処理を行う際に、信頼されていないデータを慎重に扱うことが重要です。以下は、主な防止策です。

1. 信頼されていないデータのデシリアライズを避ける

最も効果的な防止策は、信頼されていないデータのデシリアライズを避けることです。外部からのデータをデシリアライズする必要がある場合は、データの検証や制限を厳密に行い、悪意のあるオブジェクトを生成できないようにします。

2. ホワイトリストベースのデシリアライズ

デシリアライズ時に、許可されたクラスのみを処理するように、ホワイトリストを使用することで、攻撃者が意図しないクラスを利用することを防ぎます。

例:Javaのホワイトリストベースのデシリアライズ

ObjectInputStream in = new ObjectInputStream(new FileInputStream("file")); 
in.setObjectInputFilter(info -> { 
 if (info.serialClass() != null && MyAllowedClass.class.isAssignableFrom(info.serialClass())) {   
  return ObjectInputFilter.Status.ALLOWED; 
 }  
 return ObjectInputFilter.Status.REJECTED; 
}); 
MyAllowedClass obj = (MyAllowedClass) in.readObject();

3. 安全なデシリアライゼーションライブラリの使用

一部のシリアライゼーションライブラリは、デシリアライズ時の安全性が強化されています。これらのライブラリを利用して、悪意あるコードの実行を防ぐことが推奨されます。

4. デジタル署名を使用したデータの検証

シリアライズされたデータにデジタル署名を追加することで、データの改ざんを防止できます。デシリアライズする前に署名を検証し、信頼できるデータのみを処理するようにします。

5. JSONやXMLなどのデータフォーマットを検討

JSONやXMLなどの安全なデータフォーマットを使用することで、デシリアライゼーション攻撃のリスクを低減することができます。これらのフォーマットは、シリアライゼーションと異なり、クラスやオブジェクトをそのまま再構築することがなく、データの取り扱いが比較的安全です。



まとめ

デシリアライゼーション攻撃は、シリアライズされたデータを信頼してデシリアライズする際に発生する脆弱性です。この脆弱性を利用して、攻撃者は任意のコードを実行したり、システムを制御することが可能です。攻撃を防ぐためには、信頼されていないデータをデシリアライズしないこと、ホワイトリストベースのデシリアライゼーション、デジタル署名の活用などの対策が必要です。

セキュリティ意識を高め、安全なデシリアライゼーションを行うことで、脆弱性からシステムを守りましょう。

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