HTTP Verb タンパリング(HTTPメソッド改ざん)は、Webサーバーがクライアントから受け取るHTTPリクエストのメソッド(GET、POST、PUT、DELETEなど)を攻撃者が意図的に変更し、不正なアクセスや操作を試みる攻撃手法です。
HTTPメソッドは通常、サーバー側で許可された操作を指定するために使用されます。例えば、GETはデータの取得、POSTはデータの送信を行います。しかし、アプリケーションが特定のメソッドの検証を十分に行っていない場合、攻撃者は意図的に異なるメソッドを使用して、システムに不正な操作を強制的に行わせることが可能になります。
HTTPメソッドの役割
HTTPリクエストは、メソッド(動詞)を使ってサーバーに指示を送ります。以下が主なHTTPメソッドです。
GET:リソースの取得。主にページやデータの読み込みに使用される。
POST:サーバーにデータを送信する際に使用。
PUT:リソースの作成または上書き。
DELETE:リソースの削除。
PATCH:リソースの部分的な更新。
サーバーは、特定のメソッドに対して許可された操作を定義し、その操作に従って応答します。しかし、この仕組みが攻撃者に悪用される可能性があります。
HTTP Verb タンパリングの仕組み
HTTP Verb タンパリングは、攻撃者がHTTPメソッドを変更してサーバーにリクエストを送信することで発生します。サーバーがメソッドごとに異なる権限を適切に処理していない場合、攻撃者は不正な操作を行うことができます。
例:メソッド変更による攻撃
例えば、通常はPOSTリクエストで送信するデータを、攻撃者がGETメソッドに変更して送信したとします。もしサーバーがメソッドの違いを正しく検証していない場合、攻撃者はGETメソッドでデータを操作することが可能になります。
また、特定のメソッド(たとえばDELETEやPUT)へのアクセス制御が緩い場合、攻撃者はこれらのメソッドを利用してデータを削除したり、不正に更新したりすることができます。
攻撃例:無効なメソッドを利用した不正アクセス
認証バイパスサーバーが認証チェックをPOSTリクエストに対してのみ行っている場合、攻撃者がGETやPUTなどのメソッドに変更してリクエストを送信することで、認証をバイパスする可能性があります。
権限昇格低権限のユーザーが本来実行できない操作を、異なるメソッドを使用して実行し、システムに対して不正な操作を行うことができます。
HTTP Verb タンパリングの危険性
HTTP Verb タンパリングによる攻撃は、アプリケーションのセキュリティを損ない、以下のような危険性をもたらします。
1. 認証・認可のバイパス
適切な認証が行われていない場合、攻撃者は認証を回避してサーバーにアクセスすることができます。これにより、攻撃者は本来許可されていない操作を実行可能となります。
2. データの破壊や改ざん
攻撃者がDELETEメソッドやPUTメソッドを悪用することで、データを削除したり改ざんしたりすることが可能です。特に、適切なメソッド検証がない場合、このリスクは高まります。
3. 不正な操作や権限昇格
攻撃者は、異なるHTTPメソッドを使用してサーバー側のロジックを欺き、権限がない操作を行うことが可能です。たとえば、管理者権限が必要な操作を低権限のユーザーが行うことができてしまいます。
HTTP Verb タンパリングの対策
HTTP Verb タンパリングからアプリケーションを守るためには、以下の対策を講じることが重要です。
1. メソッドごとの厳密なアクセス制御
HTTPメソッドごとに適切な権限を設定し、どのメソッドがどの操作を許可されているかを明確にすることが必要です。特に、DELETEやPUTなどの操作は慎重に管理するべきです。
2. サーバー側のメソッド検証
サーバー側でHTTPメソッドを適切に検証し、許可されていないメソッドからのリクエストを拒否することが重要です。意図しないメソッドでのアクセスがあった場合はエラーレスポンスを返すように設定しましょう。
3. Webアプリケーションファイアウォール(WAF)の使用
WAFは、不正なHTTPリクエストをブロックするために役立つツールです。HTTPメソッドの異常な使い方を検知し、攻撃を防ぐことができます。
4. セキュリティテストの実施
定期的にセキュリティテストを行い、アプリケーションがHTTPメソッドに対する攻撃に耐えうるか確認しましょう。ペネトレーションテストやセキュリティスキャンを活用して脆弱性を早期に発見することが重要です。
まとめ
HTTP Verb タンパリングは、HTTPメソッドを悪用してサーバーのセキュリティを突破する攻撃手法です。特に、適切なメソッド検証やアクセス制御が行われていない場合、この攻撃によって認証のバイパスやデータの破壊が発生する可能性があります。サーバー側での厳密なメソッド検証やアクセス制御、WAFの導入など、適切なセキュリティ対策を講じることで、この攻撃からアプリケーションを守ることができます。
開発者としては、HTTPメソッドに対する理解を深め、攻撃を未然に防ぐための適切な対策を常に意識することが求められます。